お風呂の排水管から水が逆流して危機一髪だった話

アメリカのお風呂の排水管は日本のものよりも詰まりやすいとよく言われています。排水管の造りや質の違いもあるのでしょうが、日本人はよくお風呂に入り髪の毛が太いということが排水管の詰まりに拍車をかけているようです。

 

現在住んでいるアパートは入居当初から浴槽の排水が弱いと感じていました。アメリカだからこんなものかなと思っていたのですが、日に日に排水力が弱まっていき、遂にはお風呂に入った後の排水に何十分もかかるようになってしまいました。

 

ラバーカップや髪の毛を溶かす溶剤を試してみたところ、却って詰まらせてしまったらしくほとんど水が流れなくなってしまいました。長時間待っていれば水がなくなるくらいには弱々しく流れているようで、コロナ禍に配管工を呼ぶのも気が引けるので、他の溶剤を試したりしてゆっくり直していこうとのんびり構えていました。

 

しかし、排水管が本格的に詰まったその日の夜に異変が起こります。なんと浴槽のお湯が逆流しているではないですか。周辺の音と入浴剤の香りから察するに上の階のお風呂のお湯が流れ込んでいるようでした。

 

驚き唖然と立ち尽くす横で流れ込むお湯は止まらず。浴槽から溢れ出そうになりました。はっと我に返りバケツで水を掻き出します。最初は外に水を捨てに行ったのですが流れ込むお湯の速度が速く、外まで行っていては間に合わないと判断しトイレにお湯を流し始めました。

 

「上の階の住人、早くお湯を止めてくれ!」と念を送りつつひたすらお湯を掻き出していると、念が通じたのかようやくお湯の逆流が止まりました。

 

ほっと一息をつくと、排水管詰まりの対策を考え始めます。上階のお風呂のお湯が流れ込んだということは、上階の排水管と合流した後の奥の方で詰まっているということです。素人では対処不能と結論付け配管工を呼ぶことにしました。

 

翌朝大家さんに連絡をして配管工を手配してもらったところ、来られるのはさらに翌日とのこと。今夜もまたお湯を掻き出さねばならないのかとうんざりしました。

 

夜になり上階の人のお風呂に入る気配を気にしながら待機していたのですが、その日は逆流が起きませんでした。どうやら上階の人がお風呂に入らなかったようでした。

 

いつ逆流が始まるかわからなかったので寝るのが遅くなってしまい、普段よりだいぶ遅い時間に目が覚めました。配管工が来た時の準備をしようとお風呂に行って浴槽に目を向けたところ驚いて目を丸くしました。なんとお風呂に水が溜まっているではないですか。

 

どうやら上階の住人は朝風呂に入ったようです。もし気まぐれで上階の人が長い時間シャワーを浴びでもしていたら浴槽からお湯が溢れ出ていたでしょう。浴槽から溢れ出たお湯を遮るものは寝室や居間まで何もなく、かつ、様々なものを部屋の地べたにおいているので、寝ている間に大損害を被るところでした。その事実に気が付いた時には肝が冷えました。

 

お昼過ぎに配管工が到着。あっと言う間に排水管の詰まりを直してくれました。こんなにも勢いよく水が流れるのを見たのは入居以来初めてのことでした。

 

詰まっていたものを見せてくれたのですが、やはり髪の毛が詰まっていたようです。黒い髪の毛で紛れもなく自分のもののようでした。上階の人が詰まらせた可能性もあるのではと若干疑っていたのです。そんなに大量の髪の毛ではなく、この程度で詰まってしまうのかと思いました。

 

驚いたのはその配管工が詰まっていた髪の毛をトイレにぽいっと流し捨てたことでした。仮にも排水管を詰まらせたものをトイレに流して、今度はそっちが詰まったらどうするんだと思いましたが、トイレの排水管はお風呂のものより太いのでしょう。アメリカらしいなと思いました。