安倍晋三元首相のご逝去に寄せて

去る2022年7月8日、安倍晋三元首相が暴漢に銃撃されご逝去されました。その突然の悲報に日本中、いえ、世界中が悲しみに包まれました。

 

事件の日以来、どうにも僕の心も沈みがちです。一度心情を吐露しないと気持ちの整理がつかず前を向けそうにないので、ここで吐き出すことにしました。普段は政治的なことに触れないようにしているのですが、今回ばかりは特別です。

 

事件が起きたその瞬間、僕は何か作業をしながら横目で日経平均株価を呑気に眺めていました。前触れなく数百円急落したことに気が付き、大き目な経済的ニュースが出たのだろうとTwitterを覗くとそこには「安倍元首相が奈良で銃撃された」という衝撃的な文字が。

 

しばらく意味が理解できませんでした。銃撃? 日本で? しかも安倍元首相が? まさか。誤報か?

 

徐々に続報が入ってきて、どうやら本当に起きた事件らしいということがわかってきました。

 

まさか命に別状はないよな。あの平和な日本で。応援演説中に。しかもあの安倍さんが。

 

そんな祈りにも似た願いも虚しく、心肺停止のニュースが流れてきました。

 

あの安倍さんが死ぬのか? 演説中に暴漢に襲われて? そんな馬鹿な。

 

その後はTwitterでひたすらに更新ボタンを繰り返し押していました。奇跡が起きて心拍回復してくれと思いながら。情報も交錯しているようで、希望を感じさせる情報や、逆に絶望を感じさせる情報が次々と流れてきました。

 

こちらの時間で日が暮れて、夜になり、日付も変わり。寝る前にせめてどうなるのか見届けたかったのですが、安倍さんの容態に関する新たな情報はなかなか流れてきませんでした。午前2時を回り、諦めて寝ようか、いやしかし寝られるだろうかと思っていたところで遂に目にしたくなかったあの文字が。

 

「安倍元首相が死去」

 

落胆し、唖然とし、茫然自失となりながら床につきました。これは現実なのか? 信じられない。という思いがずっと頭の中を駆け巡っていました。

 

寝苦しい夜が明け、目が覚めてすぐにニュースを確認。残念ながら昨日のことは夢ではありませんでした。

 

不安、悲しみ、絶望、怒り。様々な感情が渦巻き、心は乱れに乱れ、全身に力が入らず。しかしここカリフォルニアはまだ金曜日。気力を振り絞り、できるだけ感情を押し殺しながらなんとか仕事をこなしました。

 

週末になっても未だ頭がうまく働きませんでした。現実逃避をするかのようにベッドで横になり、しかし世の中の動きが気になって仕方がないので起き上がってはTwitterを眺め。時折生前の安倍さんの動画を見ては涙を流し。そのような生産性のないことを繰り返していました。

 

一人の政治家の死がこんなにも僕の心に影を落とすとは。自分でも予想外のことで驚きでした。誰かの死でこんなにも落ち込んだのは実の祖父母が亡くなった時以来かもしれません。何故にこんなにも落ち込んでいるのか、その理由を考えていました。

 

選挙の応援演説中に現職国会議員が銃撃されるという、民主主義を揺るがしかねない暴力的な事件が発生したということも理由の一つでしょう。次の世代に平和な日本を引き継げるのかと。しかし何よりも安倍さんという人が亡くなってしまったという事実が何よりも大きかったのだと思います。

 

ニュースのインタビューでこのように答えていた人がいたそうです。「親しい親戚のおじさんが亡くなったようでとても悲しい」この気持ち、とてもよくわかります。歴代最長の首相を務められ、日本を引っ張っている姿を見聞きしてきたので日本のお父さんのように思えるのでしょう。家族を失ったような悲しみを感じています。

 

メディアへの露出も積極的だったように思え、首相在任中にテレビのバラエティー番組などで何度かお目にしたことがあります。そこでの出演者や国民へ向けた言葉は気さくで、優しく、暖かみがあり、とても親しみを覚えたことを覚えています。

 

意地悪な質問も多かったのですが、少し考えた後に、角が立たず、笑いを取り、それでいて国民に想いを込めた受け答えをしていたのを見て、聡明で頭の良い方だなと感じたことも覚えています。政治家として最も重要な能力の一つであろう、人の気持ちを掴むことにも長けていたようです。

 

大変な勉強家でもあったようで、外交や経済の事など新しいことを常に学んでいたようです。どうも政治家には経済に明るくない人が多いらしいのですが、安倍さんは熱心に経済を勉強して、しかも自分のところに意見を求めに来られて驚いたと経済学者の方が言っていました。

 

そんな安倍さんだからできたであろうアベノミクスは前政権から引きずっていた円高株安を是正しました。失業率などは大幅に改善され、就職活動を控えていた学生等にはまさに救世主だったのではないでしょうか。この政策は経済的に暗雲立ち込めていた日本に希望の光を見せ、大げさでなく日本を救ったのだと思っています。

 

賃金の改善や緩やかな物価の上昇までには繋がっておらず、二の矢三の矢が期待されていましたが、色々しがらみが多かったのか次の一手が打てていませんでした。しかしいつかはやってくれるだろうと思っていたので、経済政策を引っ張っていたであろう安倍さんがいなくなってしまったのは誠に残念であり、不安でもあります。

 

外交でも活躍され、日本の存在感を増し影響力を強めました。僕は外交について詳しくありませんが、安倍さんのご逝去に対する多くの国の要人の反応を見ると、世界にとっても重要な人物であったであろうことは想像に難くありません。

 

ここまで書いてきて喪失感の理由がわかってきました。どうやら僕は安倍さんにかなりの好感を抱いていたようです。安倍さんがこの世からいなくなってしまったのが寂しくて仕方がないのです。安倍さんが今後の日本を見届けることができなくなってしまったのが悔しくて仕方がないのです。

 

多くの成果を残し、また今後も大きな成果を残していったであろう優秀な人を失ったのは日本として大きな大きな損失でしょう。ご本人もたくさんやり残したことがあったでしょう。ただただ残念で仕方ありません。

 

今はただ安倍晋三元首相のご冥福を心よりお祈りします。

 

願わくば、安倍さんの遺志を受け継ぐ政治家たちが活躍することを期待しています。