夜に突然の訪問者

日本にいるころから、僕は事前の約束がない訪問者は基本的に無視するようにしています。

 

先ほど夜八時ごろアパートの入口の戸を叩く音が聞こえました。夜に突然の訪問者は危険すぎるので無視していました。

 

少しすると諦めたのか戸を叩く音がやみました。ほっとしていると今度は部屋の窓の方に近づいてくる足音が。

 

緊張感を高めていると、その謎の訪問者が窓越しに声をかけてきます。「そこにいる? あなたの郵便が家に間違って届いたから届けに来た」

 

アメリカでは誤配がとても多いです。親切なのはいいが、誤配ごときで夜に突然訪問してくるのはやめてほしいなと思いながら入口へ。念のため内鍵をかけつつ戸を開けるとそこにはお隣さんが。

 

「あなたの給与明細がうちに誤って届いていたから届けに来た。また給与明細が届かなかったら、うちに連絡してみて」と僕の給与明細と連絡先を渡してきました。

 

給与明細は他人に見られたくないものではありますが、かといって今後の誤配に備えて連絡先を控えておきたいと思うほど大げさなものでもありません。戸の下の隙間にでも差し込んでおいてくれれば十分なのにと思ってしまいました。

 

英語がうまく聞き取れていないのか、お隣さんの真意を測りかねて困惑しながらもお礼を言って話を終えました。

 

残っていた洗い物を洗いながら今起きたことについて考えていたところ、合点のいく説明を思いつきました。

 

先ほど給与明細と言いましたが、厳密にはpaycheckです。checkの名の通り、給与を振込にしていない人には給料の小切手が届きます。僕は振込にしているのでpaycheckはただの給与明細みたいなものなのです。

 

アメリカでは貯金をあまりしない人が多いと聞きます。家賃やクレジットカードの引き落としなど、支払いが期限直前になったり遅れてしまう人も多いようです。そのような人たちにとっては給与を期日通りに受け取ることが重要であろうことは想像に難くありません。

 

paycheckというのは人によってはそれくらい重要なものなので、誤配に気が付いた時点で急いで持ってきてくれたのでしょう。

 

怪訝そうに対応してしまい申し訳ないなと思ってきました。次にお隣さんと顔を合わせたら、改めてお礼を伝えたいです。

 

それでも。やはり突然夜に訪問してくるのは控えてほしいなとも思いますが。